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【現地レポート】男子決勝 千葉ジェッツvsシーホース三河「流れを呼び込んだキャプテンの3分9秒」

93回目の天皇杯を手にしたのは――千葉ジェッツだった。
決勝戦、シーホース三河を89-75で破り、2年連続の戴冠である。勝因を大野 篤史ヘッドコーチは、「リバウンドをコントロールできたことが一番だと思います。第1ピリオドで引き離されそうになったときにしっかりついていくことができましたし、我慢比べの中で自分たちがリバウンドを取って、走る展開に持ち込むことができました。そして第3ピリオドの10分間、三河よりも自分たちがやるべきこと、やりたいスタイルを貫くこともできました」と振り返る。

前日の記者会見で、決勝戦に臨む両チームがディフェンスやリバウンド、ルーズボールといった泥臭い部分を苦にしないことが勝利につながると言っていた。短期決戦になればそれらはより色濃く勝敗を分ける要因となるが、一方で忘れてはいけないこともある。どれだけ強固なディフェンスを敷き、リバウンドやルーズボールに飛び込み、自分たちのボール支配率を上げようとも、そのボールを得点に繋げられなければ勝利につながる流れは生み出せないのだ。
逆にいえば、たとえ失点をしたとしても得点を返すことができれば、相手に流れを渡さないこともできる。

その視点でゲームを振り返ると、第3ピリオドの序盤に千葉の㉞小野 龍猛選手が決めた4本のシュートが、ゲームの趨勢を決めたと言ってもいい。
最初の2本はそれぞれ、三河が3Pシュートを2本決めた直後、追い上げに高まる機運を挫く3Pシュートだった。

三河の⑥比江島 慎選手は、「あのシュートはダメージが大きかった。そこで我慢すればよかったのだけど、逆に勢いの乗らせてしまった」と悔い、鈴木 貴美一ヘッドコーチも「今日は3Pシュートを簡単に打たせないように、と指示を出してゲームに入ったのですが、負けている場面こそ、自分たちが一番やられてはいけない3Pシュートをやられてしまいました。あそこがターニングポイントだった」と認める。

小野選手は、㉗石井 講祐選手のフリースローを挟んで、さらにもう1本、3Pシュートを沈めている。
「最初に三河にポンポンと決められて、流れが向こうにいきかけたところだったんですけど、自分の中ではしっかりとノーマークを作れていたと思うんです。そこで最初の1本が入って、次の速攻での1本も入ったので、自分の中では『入る』と確信して、打ち続けました。あそこでは絶対、相手に流れに乗らせないことを心がけて、絶対に決めるという気持ちで打ちました」

さらに小野選手は、続けてエンドラインからのスローインに合わせたシュートも決めて、わずか3分9秒の間に11得点を挙げている。勝利への流れを作りだした殊勲のプレイである。

今大会の千葉は、正ポイントガードである②富樫 勇樹選手を怪我で欠きながら、その穴を⑪西村 文男選手、①阿部 友和選手を中心に全員で埋めた。まさにチーム全員で下賜された天皇杯だった。
但し、決して「怪我の功名」ではない。不測の事態が起こったときに、すばやくそれに対応し得るだけの実力を、ベテランの域に入りつつある西村選手も阿部選手も持ち合わせていた。小野選手も「キャプテンとして『状況判断をしろ』と要求することはありますが、基本的には勇樹のときと変わらず、彼らの作る流れに従ってやっています」と信頼を置いている。
そうしたチームをまとめ、引っ張り、背負うキャプテンだからこそ、チーム全員の思いを3分9秒の間に放った4本のシュートに乗せたのだろう。
表情こそ変えることはないが、ボールはシュートを放つ選手の思いに正直なのである。

勝利を得るには、ゲームの中で行ったり来たり、ときに停滞する流れをいかに読むかにかかっている。しかし流れを読むだけでは新たな流れを生み出すことはできない。行動を起こし、それを結果に結びつけてこそ、勝利につながる流れは生まれてくる。
千葉ジェッツと、彼らを支えるブースターを熱狂の渦に引き込んだのは、キャプテンの矜持が見せた3分9秒だった。

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